国税庁が7月1日に発表した2016年分の路線価(1月1日時点)は、全国平均で前年比0.2%のプラスとなり、リーマン・ショック前の2008年以来、8年ぶりに上昇に転じました。 東京、大阪、愛知を含む14都道府県で上昇し、前年の10都道府県からの増加となりました。 東京都内の路線価は前年比で平均2.9%(前年2.1%)の上昇となり、変動率が3年連続のプラスとなりました。
全国平均の前年比でプラスに転じたことは、地価上昇が三大都市圏から地方の中核都市へ広がったことを反映しております。札幌や金沢などの10都市の最高路線価は2桁の上昇率となり、北海道、広島、福岡、熊本の各県は前年の横ばいか下落から上昇に転じました。東京では都内の税務署管内ごとの最高路線価は48地点のうち47地点で上昇しました。40地点で昨年の上昇率を上回り、5%以上のプラス地点が昨年の20から31に増えました。横ばいは1箇所で、下落は3年連続でゼロでした。堅調なオフィス需要や訪日外国人の増加に支えられ、銀座や新宿などの都心部で大きく上昇しました。
全国で最も高いのは、31年連続で東京・中央区銀座中央通りの「鳩居堂」前で、1平方メートルあたり3200万円となり、上昇率も前年比18.7%で都内最高となりました。 銀座では訪日観光客の急増に対応した商業施設の開発が相次いでおります。都心のその他の地区でも宿泊施設の新設ラッシュが続いており、また高級マンションの開発も活発です。 企業の都心回帰の動きを背景に、渋谷や大手町、日本橋などを中心に都心のオフィス需要は堅調です。
ただし、1月1日時点の路線価に比べ、最近の不動産市場には変調の兆しが出始めています。 年明け以降に円高が進み、以前ほど外国人投資家が目立たなくなったといわれます。さらに英国の欧州連合(EU)離脱の混乱が長引けば、海外からの資金流入が細る懸念もあります。こうした不透明感の強まりに加え、オフィスは2018-19に完成するビルが多く、供給過剰になる懸念もあるようです。オフィス賃料の上昇はピークに近づいているとの見方や、マンション需要も今年に入り高額物件の売れ行きが鈍るなど曲がり角に来ているとの見方もあります。 持続的な地価上昇には、成長戦略を通じた賃料上昇の環境づくりが必要との指摘が出ております。
2016年分の最高路線価
順位・税務署 | 路線名 | 路線価 |
---|---|---|
1. 京 橋 | 中央区銀座5丁目 銀座中央通り |
32,000 (18.7) |
2. 麹 町 | 千代田区丸の内2丁目 大名小路 |
22,500 (7.2) |
3. 新 宿 | 新宿区新宿3丁目 新宿通り |
21,440 (15.0) |
4. 四 谷 | 新宿区新宿3丁目 新宿通り |
19,600 (16.7) |
5. 渋 谷 | 渋谷区宇田川町 渋谷駅側通り |
18,640 (17.1) |
6. 日本橋 | 中央区八重洲1丁目 外堀通り |
16,240 (8.0) |
7. 芝 | 港区新橋2丁目 新橋西口駅前広場通り |
10,160 (15.5) |
8. 麻 布 | 港区北青山3丁目 青山通り |
9,680 (16.3) |
9. 豊 島 | 豊島区東池袋1丁目 グリーン大通り |
8,010 (9.0) |
10. 東京上野 | 台東区上野4丁目 中央通り |
6,450 (7.5) |
(2016年7月2日日本経済新聞より)
※路線価とは
国税庁が発表する主要な道路に面した土地の1平方メートルあたりの標準価格(1月1日時点)。相続税や贈与税の算定基準となる。国土交通省が発表し、一般的な土地取引の指標となる公示地価より調査地点が多く、土地の相場を詳細に把握できる。 公示地価の水準の8割程度で売買実例も参考に算出する。