民法改正 賃貸借契約の連帯保証人について

Poste date: 2023年10月30日

民法が120年ぶりに改正され、その一部が2020年4月1日より施行されます。今回の民法改定では、保証人の保護が強化されています。

ここでは、改正点のうち、不動産取引、主に賃貸借契約における連帯保証人の保証債務や保証の範囲、情報提供義務に関連する項目についてご説明致します。



改正ポイントⅠ 連帯保証額(極度額)の設定

賃貸借契約を締結する際、連帯保証人をつけて契約をする場合があります。
連帯保証人は、借主に請求しても支払われなかった場合等に請求が来る保証人とは違い、債務の返済に関して賃借人と全く同じ責任を負います。
現行の民法では、賃貸借の連帯保証人の責任は基本的に制限がありませんでしたので、連帯保証人は、どれ位の金額を保証する事になるのかわからないまま契約書に捺印せざるを得ませんでした。
しかし改正された民法では、賃貸借契約の個人連帯保証人を保護するための規定が新設され、不動産賃貸借契約において連帯保証人を付けるときは、必ず契約締結時に極度額(連帯保証人の責任限度額)を定めなければならないことになりました。

この改正により、極度額を定めていない連帯保証条項は無効となり、改正民法施行後の賃貸借契約書の連帯保証条項には、下記いずれかの内容の文言を記載する事が必要になりました。

  1. 連帯保証人は、賃貸人に対し、賃借人が本契約上負担する一切の債務を極度額〇〇円の範囲内で連帯して保証する。
  2. 連帯保証人は、賃貸人に対し、賃借人が本契約上負担する一切の債務を賃貸借契約締結時の賃料の○ケ月分相当額の範囲内で連帯して保証する。




改正ポイントⅡ 連帯保証人に対する情報提供義務の新設

改正民法では連帯保証人のために必要な情報を提供することが新たに義務付けられました。
連帯保証人が、賃借人を保証しても大丈夫かどうかの判断する為の材料を与える目的です。

① 賃借人の連帯保証人に対する情報提供義務

事業用物件の賃貸借契約を締結する際には、賃借人から個人の連帯保証人に対して財産状況など一定の情報を提供することが義務付けられました。提供義務を負っているのは賃借人ですが、万が一賃借人がその義務を怠っていた場合には保証契約を取り消されてしまう可能性があります。その様な状況を防ぐ為、新規に事業用の賃貸借契約を締結する際には契約書に情報提供をしたかどうかを記載する欄を設けるなどの対応が有効かと思われます。ちなみに保証人が法人の場合、情報提供義務はありません。

② 賃貸人の保証人に対する情報提供義務

連帯保証人から賃借人が家賃を滞納したりしていないか等に関して情報開示の請求があった場合には、情報提供することが賃貸人に義務付けられました。こちらは上記①の賃借人から連帯保証人への情報提供義務とは異なり、事業用物件か否かに関わらず適用され、連帯保証人は法人・個人を問いません。賃借人の依頼を受けて保証をしている全ての保証人に対して適用されます。

 

改正ポイントⅢ 元本確定事由の定め

改正民法では、個人保証人の保護をする観点から、元本確定(保証の範囲を確定)をする事になりました。

改正民法が元本が確定する場合として定めているのは次の4つです。

    ① 主たる債務者である賃借人が死亡したとき
    ② 保証人が死亡したとき
    ③ 保証人が破産したとき
    ④ 保証人の財産に強制執行等がされたとき

4点の詳しい内容は、以下の通りです。

① 賃借人が死亡したとき

賃借人が死亡したときは個人保証人の保証する元本が確定します。
賃貸借契約では、賃借人が主たる債務者で、賃貸借契約上の債務を本来払わなければならない人です。その賃借人が死亡したときは、個人保証人の保証債務の元本は確定します。
したがって、それ以降生じる家賃等について連帯保証人は責任を負いません。
例えば、賃借人のAさんが亡くなった場合でも、相続人である妻や子供が賃借人の地位を相続する事が出来ますので、賃貸借契約は終了しません。
しかし、Aさんが亡くなった場合、個人の連帯保証人はAさんの支払い能力を信用して連帯保証人になったのであり、相続人とも信用関係を築いている訳ではないので、相続発生後に生じる家賃については、責任を負う必要がなくなるという事になります。
*賃借人は新しい連帯保証人を探すか、保証会社と契約する事が必要になります。

② 連帯保証人が死亡したとき

連帯保証人が死亡したときも個人保証人の保証する元本が確定します。
連帯保証人の相続人を保護するために定められたルールです。ただし、連帯保証人が死亡する前に既に発生していた賃借人の債務は、連帯保証人の相続人が責任を負うことにはなります。
トラブルを未然に防ぐ為には、連帯保証人がご健在であるかどうかの確認が今後は必要になるかと思われます。
*賃借人は新しい連帯保証人を探すか、保証会社と契約する事が必要になります。

③ 連帯保証人が破産したとき

連帯保証人が破産したときも個人保証人の保証する元本が確定します。
この場合、いずれにせよ保証債務の十分な履行は期待できませんし、破産手続の中で連帯保証人が負う債務を確定させる必要もあります。
*賃借人は新しい連帯保証人を探すか、保証会社と契約する事が必要になります。

④ 連帯保証人の財産に強制執行等がされたとき

連帯保証人の財産に強制執行等がされたときも個人保証する元本が確定します。
このような場合は、連帯保証人が経済的に相当の苦境に陥ったときですから、改正民法は、個人保証人保護のために、それ以降の家賃等の保証をする必要はありません。
*賃借人は新しい連帯保証人を探すか、保証会社と契約する事が必要になります。

 

 

 

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