2024年区分所有法改正予定 - 何が変わるのか?

Poste date: 2024年6月18日

日本、特に多数のマンションが建てられている東京圏では、老朽化したマンションの増加が社会問題となっていますが、所有者が所在不明であったり、海外居住であったりと、建て替えを決議するのに様々な障害があります。そこで老朽化したマンションの建替えを進めるために、区分所有法の改正が2024年中に行なわれる事になっています。

区分所有法とは(正式名称:建物の区分所有等に関する法律)

分譲マンション等、区分所有建物に関する権利関係や管理・維持の方法について定めた法律になります。

法律ですので、違反した場合は罰則もあります。

*賃貸マンションに入居する際にも渡させる「マンション管理規約」は、国土交通省作成の「マンション標準管理規約」を参考にして、各マンションが独自で「マンション使用に関するルール」を定めた物になりますので、マンションを所有してない居住者も対象になる規則です。

なぜ改正されるのか?

国土交通省のデータによりますと、全国のマンションのストック数は、655万戸、1,500万人超(2018年末時点)が居住しています。そのうち、築40年以上の高経年マンションは2021年時点で115.6万戸、2026年には169.7万戸、2031年には249.1万戸になると推計されています。その一方で、マンションの建て替えの実績は累計で282件、約23,000戸(20233月時点)となっています。老朽化したマンションの増加は、様々な問題を生じさせる為、法改正によりマンションの再生が円滑に進むようにする事は、喫緊の課題となっています。

出典:国土交通省「マンションを取り巻く現状について」

老朽化マンションの問題点

外壁やコンクリート、配管などの劣化

放置すると、外壁の剥落により周辺に危害を及ぼす危険性があったり、水漏れなどが起きる可能性がある為修繕が必要ですが、修繕には多額の費用がかかり、また費用は年々値上がりしています。

耐震性

地震国である日本では、建物の耐震性は非常に重要となります。耐震基準を厳しくし、地震による被害を減らす為に、1981年に建築基準法が改正されました。確認申請を受けたのが改正前の建物は、「旧耐震基準物件」となり、震度5強程度の中程度の地震で大きな損傷がない事が基準となります。改正後に確認申請を受けた建物は、「新耐震基準物件」となり、震度6程度の大規模の地震で倒壊しない事等が基準となっています。老朽化マンションは、「旧耐震基準物件」に該当します。

詳しくは「日本の建物の耐震性、構造種類(免震・制震)

資産価値の低下

管理状態が非常に良好なヴィンテージマンションや、費用をかけてリノベーションしたマンションを除き、新しいマンションの方が需要がある為、築年の経ったマンションの資産価値は低くなる傾向にあります。

空室の上昇

築年の経った物は需要が低い為、空室率が高くなります。入居者が少ないと修繕費や管理費が不足し、管理が行き届かなくなり、更なる空室の増加を招きます。

改正の内容

現行の区分所有法では、マンション等が適切に維持・管理される為に、以下のような決議要件が定められています。

決議事項 多数決要件
普通決議:共用部分の簡易な修繕(スロープの設置・外壁補修等) 過半数以上
特別決議:共用部分の大規模な改造・増改築など 4分の3以上
建て替え 5分の4以上

多数決の母数を変更

多数決の母数は全区分所有者となる為、所在等が不明な区分所有者は反対者と同様に扱われ、円滑な決議を妨げてきました。そこで、管理組合等から申し出があった場合には、裁判所等の関与の下で、所在等不明の区分所有者を決議の母数から除外することが検討されています。

出席者の多数決による決議を可能にする

所有者の所在が分かっていても、所有者が海外居住者であったり、病気や高齢等の理由により、集会に参加出来ないケースも多くあります。集会に参加しない所有者も反対者と同様に扱われる為、これもまた円滑な決議を阻害する一因となっています。そこで普通決議他、一部の決議事項に関しては、出席者の多数決による決議を可能とすることが検討されています。

また、近年日本に居住していない、外国人投資家による物件の購入が増えている現状を踏まえ、「出席した区分所有者」には、書面若しくは電磁的方法で、又は代理人によって議決権を行使した区分所有者も含まれるようにする案も検討されています。

>> 外国人は日本の不動産を購入できるか?

共用部分の変更決議の要件の緩和

共用部分の大規模な変更には、4分の3以上の賛成が必要ですが、要件を満たす事は容易ではなく、必要性の高い工事の実施の妨げになっています。そこで、以下の要件を満たした場合に限り3分の2以上の賛成により変更可能となる事が検討されています。

・共用部分に安全性に欠けている箇所がある事により、他人の権利等を侵害する恐れがある場合に、その箇所の除去に関して必要な共用部分の変更

・バリアフリー化に対応する為の共用部分の変更

・立替え決議の多数決要件の緩和

立替決議の多数決要件は5分の4以上となっています。この要件の厳しさが、迅速な建て替えの妨げとなっている為、以下の要件を満たした場合に限り、4分の3以上の賛成により立替可能となる事が検討されています。

・耐震に問題がある場合

・火災に対する安全性が十分ではない場合

・外壁等が剥落する恐れがあり、周辺に危害を及ぼす可能性がある場合

・給水、排水その他の配管設備の損傷・腐食・劣化等により、衛生上に著しく問題がある場合

・バリアフリー基準に適合していない場合

まとめ

築年数が経っているマンションであっても、耐震補強をしたり、定期的にメンテナンスやリノベーションをしている物件もありますので、全ての古いマンションを建て替える必要があるわけではありません。しかし居住に問題のある老朽化したマンションを抑制し、人々が快適に暮らせる安全なマンションを増やす事は、非常に重要な課題です。

今回の法律改正がなされても、多数決の要件を満たす事が依然として難しい事、修理や建替えには多額の費用負担が生じる等の問題が残る為、大きく修繕や建替えが進むわけではないかもしれません。しかし、安全性に問題がある老朽化したマンションが少しでも減少し、また所有者が所有しているマンションの管理状態や運営方法に興味を持つきっかけになることを期待したいと思います。

尚、今回ご説明した内容はまだ確定事項ではありませんので、今後変更される可能性があります。また、ご説明した以外にも変更が予定されている項目が多数あります。

 

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